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プロの経営者

 先月から今月にかけていろんなところで、講演する機会にめぐまれました。テーマは主催者にとって異なります。博多で行ったテーマは「私が出会った名経営者」で、松下幸之助さんやソニーの盛田昭夫さん、ホンダの本田宗一郎さんさん、藤沢武夫さん、トヨタの豊田英二さん、花井正j八さんなど私が新聞記者として接触した経営者が、いかにプロの経営者であったことを話てきました。この中で豊田英二さんを除いてすでに鬼籍に入ってしまいました。

 今年の株主総会では、年間報酬1億円を得た経営者の名前が公表されました。講演の最後の質疑応答のときに、いくつかの質問がありましたが、一つは日産のカルロス・ゴーン社長の8億9000万円という報酬が高いか安いか、もう一つは現在の経営トップでプロと呼べる経営者は誰ですか、というものです。

 私はゴーンさんの報酬が決して高いとは思っておりません。彼がプロの経営者だからです。もし日産がルノーの資金援助を仰がず、仮に仰いだとしても、ルノーがゴーンさんを派遣しなかったとしたら、今日の日産はなかったでしょう。マスコミではそれほど触れませんが、2、3年前までは今の倍以上の報酬を得ていたはずです。彼こそがプロ中のプロの経営者です。

 私がゴーンさんを評価するのは、彼が日産の再建に際して、当たり前のことを当たり前のようにやったからです。経営の教科書に書いてある通り、工場閉鎖、人員整理、系列の解体など徹底したリストラを実行したにすぎません。これは「言うは易く行うは難し」です。しがらみのある日本人の経営者では出来なかったでしょう。

  2番目の質問ですがゴーンさんを除けば、現在の産業界の中で、プロと呼べる経営者はすぐに思い出せません。強いて挙げれば日本電産の永守重信社長やユニクロの柳内正社長ぐらいしか思い浮かびません。最初に挙げた名経営者に共通しているのは、創業型の経営者であることです。永守社長も柳内社長も創業型の経営者です。

 創業者には自分が興した会社を大きくしたいという夢があります。反対にサラリーマン型の経営者には、「自分の任期中はつつがなく」という考えがあります。これではプロとは言えません。

 つまりプロとは経営者に限らず、スポーツの世界でも芸術の世界でも、夢を持ちその実現に向かって邁進している人です。そういった観点から見れば、今の日本の産業界には夢を語りその実現に向かって走っている営者が少ないのも事実です。これでは日本の産業が衰退するのは、むべなるかなです。

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トヨタはいつからニッチメーカーになったのか

 昨日、日本自動車工業会の総会があり、その後、懇親パーティがありました。昨年はリーマンショックの影響で懇親パーティは開かれませんでした。今回の総会でトヨタの豊田章男社長が副会長に選出され、懇親会の会場の入口で、会長や他の副会長とともに立例をしてました。ところが立例の時間が過ぎると、章男さんだけが、会場を逃げるように去ってしまいました。会長や他の副会長は会場で出席者にあいさつ回りをしていました。

 自工会の懇親パーティには大勢の国会議員が押し寄せるので有名ですが、章男さんがいないのでブーイングの連続でした。懇意にしているトヨタの役員に、なぜ章男さんが懇親会に出ないのか尋ねましたが、「あの人は社内にも絶対に自分の行動を知らせません。海外に行っても、われわれは新聞を見て知るのです」という返事がきました。

 案の定、今日の夕刊に「豊田、米で電気自動車生産」の記事ガ載っていました。現地で提携先の社長やカリフォルニア州知知事と記者会見してました。しかし章男社長は民間のエアラインではなく、専用ジェット機でいくのですから、懇親会に出る時間は十分あったはずです。

 私が驚いたのは提携の内容です。提携先のテスラ・モーターズはベンチャー企業で、高級電気スポーツカーを生産しているメーカーです。スポーツカーの時代はすでに過ぎ去り、米国における需要は年間1万台もありません。テスラは電池にパソコンで使っているリチウム電池を搭載して、これまで1000台ほど販売しております。専門家に言わせれば、ニッチのそのまたニッチメーカーです。この企業に2%出資(45億円)してもあまり意味がありません。逆に利用されるのがオチでしょう

 出資にあたり、会長の張さんが大反対したようですが、章男さんは強引に押し切ったようです。トヨタに取って45億円ははした金ですが、問題はトヨタがこの種のクルマを手掛けるべきかどうかです。

 章男さんの鶴の一声で、原価が1台1億円、売価が3700万円の高級スポーツカーを作ってみたり、ニュルブルクリンク24時間耐久レースで自分でハンドルを握ったり、彼は経営者ではなく単なるクルマおたくです。今回の提携もその延長にあります。トヨタの社員は「うちはいつのまにかニッチメーカーになり下がってしまったのですかね」と嘆いていました。

 3月16日にこの欄で「目には目を、歯には歯を」をかきました。この中でトヨタが米国でイメージアップを図るには、「NUMMIの工場閉鎖を撤回し、ここでハイブリッド車を生産すべき」と書きました。テスラとはNUMMMIの跡地を使って生産する計画ですが、アリ(テスラ)の脊中かに巨像(トヨタ)が乗ってみたところで、さしたる効果はありません。

 

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文章の難しさ

 モノ書きを生業としているので、よく「さらサラサラ書けるのがうらやましい」といわれることがあります。私が心がけているのは小学生とまでにはいかないまでにも、中学生でも理解できるような文章にすることです。

 先日、読売新聞論説委員の竹内政明さんの「名文どろぼう」(文春新書)を手にして、唸りました。表紙のキャッチコピーが「名文を引用して、明文を核技術」とあったからです。竹内さんは10年近く読売の「編集手帳」を書かれています。編集手帳に限らず、短文で言いたいことを読者に届けるのは、並大抵ではありません。それを可能にするのは、名文を引用することのようです。

 正直言って、文章は長いほうが楽です。私の書いたノンフィクション作品でも短いもので、400次原稿用紙1000枚が普通で、長いものは2000枚近く作品もあります。週刊誌屋月刊誌にも時折寄稿しますが、1回の枚数が20枚から30枚です。

 最近の難行苦行の原稿は、米国の新聞社から依頼されたトヨタに関する原稿です。注文付けられたのは「米国人はトヨタ車を知っていますが、会社としてのトヨタは知りません。そのことを頭に入れて書いてください」ということです。むろん新聞紙面ですから枚数には限界があります。せいぜい7、8枚程度です。さらに翻訳しやすいように書かなければなりません。

 書き始めたと途端、「すぐ2,30枚言ってしまう」と思いました。そんな場合、どうするか。私は、新聞記者時代からメモを取らなければ、スケルトンも作りません。毎朝の散歩のときに書くべきことを整理して、帰った後、おもむろに書き始めるのです。今回の米国新聞社からの依頼原稿に際しては、まず15枚をめどに書き、それを5枚に短縮する手法を取りました。

「他人の原稿はいくらでも削れるが、自分の原稿は削れない」という人がいますが、私は自分の原稿でもいくらでも削れます。削っていくうちに、筋肉質の原稿に仕上がっていくのが、わかります。与えられたテーマをまとめ、最後に翻訳しやすいように、主語と述語の関係をはっきりさせれば、それで終わりです。

 私は単行本の場合、意識して持って回った表現をすることがままあります。知り合いの人からは、「佐藤節ですね」と言われますが、2007年と2009年にホンダとトヨタに関する英文の本を出版しましたが、最初のホンダは翻訳者は相当苦労したようです。トヨタに関しては最初から英文を意識して描いたので、翻訳も相当楽だったと聞いています。

 そこで分かったのは、「佐藤節」はしょせん、自己満足に過ぎないということでした。私は名文はやはり「誰にでもわかる文章」だということです。

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