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トヨタの決算報道に対する違和感

 日本企業で一番借入金の多い会社をご存じでしょうか。この会社の連結ベースの長短合わせた借入金総額は、12兆円を超します。昨年、会社更生法を申請した日本航空を連想しがちでしょうが、答えはトヨタです。かってのヨタは豊富な余裕資金を銀行に預け、膨大な金融収支を上げていたことから”トヨタ銀行”と揶揄されました。しかしそれも「今は昔」です。 そのトヨタが昨日、平成23年3月期の第3・四半期の決算を発表しました。

 今日、朝日は「トヨタ、営業利益3・7倍に」「2011年見通し、アジアで販売上積み」。日経は「トヨタ、純利益1400億円上積み」「今期予想4900億円、アジア販売伸び」と、景気のいいの見出しを付けて報じています。これを受けて、今日のトヨタ株は前日比180円高い暴騰しました。

 しかし待ってほしい。表面の数字を見れば、業績は順調に回復しているように見えますが、内容は寒々としたものです。本格回復にほど遠い言わざるをえません。新聞はあまり触れていませんが、トヨタ本体の単独決算(4月ー12月)の売り上げは前年同期比5%ほど増えています。ところが営業利益は、昨年とほぼ同じ2835億円の赤字です。通期の赤字は22年度の3280億円から4200億円に拡大すると予想しています。

 連結決算の今期の営業利益は、朝日の見出しにあるように22年度の1475億円から5500億円に3・7倍伸びると予想しています。トヨタ単体と連結の乖離は金融事業にあります。トヨタは昨年4月から12月までの9カ月間で300億円の営業利益を上げました。つまり連結ベースの営業利益の4分の3を金融事業で稼ぎ出しているのです。

 私の古巣の日本経済新聞は、営業利益の増減要因を図解で示しています。会社の発表通り増益要因として販売増などで5700億円、原価改善で1200億円、減益要因として為替変動要因として2200億円、経費の増加として1001億円を上げ、差し引き4221億円の営業利益となったと解説していますが、金融事業には一切触れていません。これではトヨタの実態は分かりません。金融事業について新聞は一切触れていません。

 トヨタが本当に再生したかは、金融事業が反映されない本体の業績次第です。本体のものづくりで黒字にならなければ、トヨタは再生したとは言えません。しかし現実は黒字転換するのか、再来年になるのか。豊田社長の「創業の原点に返る」、「現地現物主義」がむなしく聞こえます。トヨタはものづくりの会社ですから、一日も早く、自動車を作って利益を上げられる会社になることを望みます。目先の数字に惑わされてはなりません。

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