Skip to content


目には目を、歯には歯を

 先日、自動車アナリストの皆さんと話し合う機会がありました。皆さんが注目しているのは来期のトヨタの業績でした。私はアナリストでないので、来期の業績は分かりません。ホンダや日産の業績は順調に回復しています。ところがトヨタは大量リコールの問題もあり、まったく予測はつきません。

 アナリストの皆さんの感触は、01年3月期の最終利益は2000億円や3000億円では話にならないとのことです。最低でも営業段階で1兆円、最終利益は5000億円出なければ、トヨタ株は推奨できないようです。この数字はまだ最盛期の半分以下です。

 トヨタのリコール問題は確かに峠は越しましたが、苦難の道はこれから始まります。米国市場の販売は1月、2月ともトヨタの独り負けでした。3月は巨額の販売奨励金を投じたこともあり、前年同月比を上回るでしょう。工場の操業率を高めるにはやむえない措置ともいえます

 こうしたやり方は麻薬以外の何もでもありません。長続きしません。この手法で無理矢理売っても、GMのように単に図体だけが大きいだけの会社になり下がってしまいます。

 今にして思えば、今回のリコール問題は、人災だったともいえます。早めに対応しておれば、通常のリコールで処理できたはずです。それがトップがモタモタしているうちに、社会問題から政治問題になってしまいました。結果はトヨタのブランドに大きな傷をつけてしまったのです。ブランドイメージは単に安売りしただけでは回復しません。下手をすれば、イメージ悪化に拍車をかけることになります。

「目には目を、歯には歯を」のたとえ通り、政治にとって傷つけられたブランドイメージを、政治の力を借りて回復させるのです。具体的には4月1日に閉鎖を決めているMUMMIの操業を継続するのです。トヨタは昨年7月、GMが経営破綻したのを機に、経済性が薄れたこと理由に7閉鎖を決めました。た。

 NUMMIは確かにGMとの合弁会社ですが、生産車種の9割はトヨタ車を生産しているので、実施的にトヨタの工場です。工場を閉鎖すれば4700人の従業員は解雇され、NUMMIに部品や資材を納めているメーカーだけでなく、輸送業者なども影響を受けます。NUMMIの閉鎖に伴って、影響を受ける人は家族も含めるとゆうに10万人を超すという試算もあります。カリフォルニア州は全米で5番目に失業率が高い州です。もしトヨタが閉鎖を撤回すれば、地元から大歓迎されるでしょう。

 NUMMIのフレモント工場は古く、すでに設備は償却済です価値があるのは土地だけです。GMとの譲渡交渉は難航が予想されますが、ここで政治力を発揮させるのです。GMは経営破たん後、実質的に米政府の管理下に置かれています。トヨタが閉鎖中止を決めたなら、それこそ章男社長がホワイトハウスに乗りこんで、GMの実質的なオーナーであるオバマ大統領に会い、そこで閉鎖中止を発表すれば、政治効果は抜群です。政治の圧力で失ったブランドイメージを政治の力で回復するのです。

 トヨタの一工場になったフレモント工場で、従来のカローラ、タコマに加え、ハイブリッドのプリウスを生産する構想を発表すれば演出効果は満点でしょう。リコールで失ったブランドイメージを回復させる第一歩となります。NUMMIはトヨタが国際企業に踏み出した出発点です。それこそ原点に返るわけです。GM提携を決断した豊田英二さんは現在96歳ですが、今なお健在で、入院先のトヨタ記念病院には、NUMMIの鍬入れ式の写真が飾ってあります。

 フレモント工場のあるカリフォルニア州はトヨタにとって金城湯池ともいうべき市場です。そこでまず信頼性を取り戻せば、間違いなく全米に波及します。閉鎖まで残すところ半月余り、果たして章男社長は決断できるだろうか。

Posted in 未分類.